複利で資産倍増?
リスク・リターンについて
特に投資信託やインデックス投資をしているとよく登場するリスク・リターン
理解しているようで理解できていなかったこのリスク、リターンについて再確認です
突き詰めても難解ですし即座に投資成績に直結するわけでもないのでシンプルに表面的なところだけを見る事にします
リターン:算術平均と幾何平均
投資におけるリターンについて確認してみます
まずは想定リターンに使用される平均という事がですが、世間一般で使われる平均は算術平均と呼ばれるもので対象の数字を全部足してその個数で割ります
一方の幾何平均は対象の数字を全部かけ算してから累乗根を取るというものです
1年目:105
2年目:95
3年目:110
4年目:105
5年目:110
例えば上のように指数が変化した場合は、算術平均は102.3となり平均リターンは2.3%になりますが、この平均リターン2.3%を5年繰り返した場合は5年目で112.0%となり実際の5年目の数字と異なります
一方、幾何平均だと101.92とわずかに下回り平均リターンは1.92%になります
この1.92%を5年繰り返すと最終年で正しく110という数字になります
このように複利で計算する投資リターンにおける平均は幾何平均を使うのが妥当と思われますが、算術平均を使うのが必ずしも間違いというわけではありません
ちなみに表計算ソフトで幾何平均を求める場合はGEOMEAN関数で求める事ができます
期待リターンが4%だと、よく毎年4%の複利で計算する事が多いと思いますが、そのまま当てはめても当然そのように増える事はありません
このばらつきの中で推移する可能性が高いということです。
ありえそうな値動きの10年の株価の推移を単純な平均リターンと比較してみました
リターン比較例
青線:毎年平均4%
赤線:リーマンショック的チャート
青線は複利でどんどん資産が増えていくイメージですね。期間が長いとより加速度的に増えていくのが明確になります。
最終的に資産は48%増加します。4%利回り10年で1.5倍という事です
一方、赤色は7年目まで上昇した後に8年目約60%急落するチャートです
リーマンショックとかバブル崩壊とかがこのようなチャートですが、これも暴落がらみではよく見かけるようなチャートです
こちらは最終的には値を戻したものの結局リターンは0だったというものです
ところでこの二つのチャートですが、どちらも平均リターン4%です
平均リターンが意味するところはこういう事なのです
実際の数値は以下のテーブルのとおりです
このように算術平均を元にした複利のグラフは多少は目安にはなると思いますが参考程度にしかなりません
7年目で売って8年目で買い迎える人は気にしなくもいいですけどね
それでも世界経済は長期には右肩上がりで4%程度の幾何平均リターンが見込めるので、これに長期にベットするのは間違いではないと思っています
リスク(ばらつき)
もう一方のリスクです
リスクというと日常生活において危険という意味で使われることが多いですが、投資におけるリスクとはばらつきの事です
ばらつきはボラティリティと呼ばれる事もありますがこちらのしっくりくるかもしれません
このリスク(orまたはボラティリティ)は標準偏差で表せられますが、投資における標準偏差は基本的に第一標準偏差の事を示しています
そして第一標準偏差:1σ(シグマ)は正規分布において約68.3%がこの範囲に収まるという意味です(2σでは約95.4%の範囲)
J.P.モルガンの超長期マーケット予測(2019年)では例えば世界株式(為替ヘッジなし)の平均リターン(幾何)は4.25(算術=6.03)、標準偏差(年率ボラリティ)=19.0ですが、これを当てはめるとリターン4.25±19(-14.75~23.25)に収まる確率が約68%という事になります
勿論数値はランダムではなく株価の源泉である企業成長や各種経済指標、市場心理も折込む事になります
シャープレシオ:リスクあたりのリターン
ここまで見てきたこの2つを組み合わせ、リスク単位の当たりのリターンを示したものがシャープ・レシオです
以下の式で表します
リスク当たりのリターンなので高い方が投資効率がいいということになります
シャープレシオに関する記事はこちらです【ネタ】
リスク・リターンに関するまとめ
- リターンは算術平均と幾何平均の違いを理解する
- 複利で毎年○%というほど単純ではない
- リスクはばらつきを示す
- シャープレシオはリスク単位あたりのリターンを示す
先ほどのグラフと一緒に「毎年○%で資産倍増!」みたいな内容の記事を時々見かけますが、それを鵜呑みにしている人も多いかもしれません
特に好調な米国株式市場やアベノミクスの体験しかないと右肩上がりのチャート、グラフに見慣れるいると違和感なく受けいれられるのでしょう
しかし、そんなに単純に資産が増えれば苦労しません
こういった内容も理解したうえで適切にリスクを認識し投資をしたいものです
また投資においてはリターンに目が行きがちですが個人的にはリスク管理が重要だと思うようになりました
投資を始めたところはいくら儲けたらとか何%上昇したらとかばかりを考えていた時期もありましたが、資金量や家族環境の変化とともに考えが変わってきています
もちろんまったくリターンを意識しないわけではなく、限られた資金を効率よく増やしたいという思いはあります
資産形成においては時間軸とリスクをしっかり管理して無理なくリターンを得られればよいという考えです。
そして、それにはグローバル分散投資が今のところ最適解と感じています
グローバル分散投資の要
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